逆転の発想術でブレイクスルーを起こす!「問題を大きくする発想法」

問題解決のための基本的なマインドセット

目の前にあるビジネス上の問題を、最も効果的に解決するためには、どのようなマインドセット(=ものの見方や考え方)を身につけるべきでしょうか。

より良い解決策は、より良い質問から生まれます。

問題の根本原因をつかむことなくして、優れた解決策を導き出すことはできません。そして、問題の根本原因に行き着くためには、いくつかの本質的な質問を自分やチームに対して、実施していくことが極めて重要になります。

多くの人が、問題を目の前にした時、「どのように解決できるか?」といきなり、解決のための手法=How の質問をしてしまいます。しかし、より重要な問いは、「何を解決すべきか」というWhatの質問であり、更に、その上位には「なぜ、解決すべきなのか?」というWhyの質問が存在します。

そして、Howの質問だけで解決策を導こうとする時、「問題の根本原因ではない、別のことを何とか解決しようとしてしまう」というジレンマに陥り、往々にして、無駄な時間や労力を費やしてしまうことがあるのです。

問題解決を導く質問の使い方

例えば、あなたは、会社からある新規プロジェクトを任せられたとします。明確な予算と目標数値、スケジュールが与えられ、一つ一つ目の前の課題をクリアして、結果を出さなくてはいけません。

6人のチームを率いるプロジェクトのリーダーとして、この案件を推進するポジションを担うことになったあなたですが、3ヶ月経って、ある問題が繰り返し発生していることに気が付きます。なぜか、あなたが作成したタスクの〆切が守られておらず、少しずつプロジェクトに遅延が発生しているのです。

さて、あなたは、この問題に対してどう対応しますか?

今、あなたの頭の中には「こうしたら解決出来るだろう」という推測が、いくつか過ぎっているのではないでしょうか。そのほとんどが、あなたのこれまでの個人的な経験から生み出された推論=予測である、ということを認識しておいてください。実際には、同じような事象でも、原因は異なる場合が往々にしてあるため、この思考のトラップにはまらないことが大切です。

それでは、「問題解決のための質問」を順に実施することで、このシュミレーションを解いてみましょう。

<Whyの質問>

「なぜ、プロジェクトに遅延が発生する問題を解決すべきなのか?」

普段、あまりこういう質問をする経験はないかもしれません。なぜなら、「Why の質問」については、実際のビジネスの現場では、すでにその答えは自明であるという前提のもとにマネジメントがなされていることがほとんどだからです。しかし、だからこそ、Why の質問について改めて考えてみることで、新しい視点を獲得できる可能性があります。

では、上記の質問に答えてみましょう。例えば…

・プロジェクトが遅延すると、役員から責任を問われ、本当にプロジェクトを完遂できるかどうか疑われ、結果的にプロジェクトが中止となるリスクが発生するため。

・プロジェクトが遅延すると、その分、コストが多く発生し、利益を獲得するタイミングが遅れ、結果的にキャッシュフローが悪化するため。

・プロジェクトが遅延すると、チームの規律が弱くなり、目標を達成しようとするモチベーションが下がり、結果的に目標未達に終わる可能性が高くなるため。

このように、しっかりと深く考えてみると、「どのような結果になることを避けなければいけないのか、それはなぜか」ということが明確になり、問題の大きさや影響の範囲をより適切に把握することができるようになります。これにより、解決すべき問題の根本原因に辿り着きやすくなるのです。

<Whatの質問>

「プロジェクトに遅延が発生する問題において、何を解決すべきなのか」

この質問に対しては、深く考えていくと、いくつかの可能性があることに気がつくでしょう。Whatの質問に対する回答を網羅的に可視化するためには、マインドマップを使うことが有効です。マインドマップについては、下記の記事も参考にしてみてください。

ビジネスアイディア発想力を100倍高める「マインドマップ活用法」

例えば、この質問に対するマインドマップを描くと下記のようになります。

「プロジェクトの遅延」に関係する要素を全て洗い出すことによって、どの要素に手を加えるべきかを判断するのです。

書き終わったら、それぞれの要素と、Why の質問の回答との関連性を考えてみてください。これにより、どの要素が、どういった結果に影響を与えているか、ということをより明確に把握することができるはずです。

要素と結果の関連性が分かれば、各要素の重要度も判断できるようになります。そして、それぞれの要素に対して、プライオリティ順に数字を記入することによって、より問題の論点を整理することができます。

<Howの質問>

ここまで深堀して考えていくと、解決するための手法よりも、「解決すべき問題の特定」が重要であることに気づくでしょう。取り組む領域が間違っていれば、どれほど方法論が優れていたとしても、目覚ましい成果は実現できません。

What の質問で明らかになった、問題に関連する要素のうち、最も重要な要素にフォーカスしましょう。

ここで初めて、「どのようにして、プロジェクトの遅延に影響を与えている◯◯という要素を改善することができるか」という形で、解決のための手法を具体的に考えていきます。

このようにして順を追って導き出した解決策は、いきなり「どうやって」を考えていた時に出した回答と比較して、随分深みに違いが出ていることに気がつくかと思います。

ぜひ、問題解決のための3つの質問のステップを、基本的なマインドセットとして、徹底的に実践するようにしてみてください。これだけでも大幅に生産性が改善されるはずです。

パワフルなソリューションをもたらす「問題を大きくする発想法」とは?

さて、3つの質問のステップをマスターできたら、いよいよ本題となる「問題を大きくする発想法」に取り組む準備ができたことになります。

Why → What → How の順番で問題解決に当たる時、このような感覚に至ることがあるのではないでしょうか。

「これまで問題と思っていたものは、実は、本当の問題ではないかもしれない。」

この現象を言い換えると、「ある別の問題を解決することによって、今取り組んでいる問題は、そもそも解決の必要がなくなる」ということです。

ダイソンやトヨタのコンサルティングを手がけていることでも有名なイアン・アトキンソン氏は、著書で次のように紹介しています。

「止まってもいいのだ。一歩下がってみよう。そして問題に取り組む代わりに、その問題の提示方法に取り組むのだ。もし、問題が円で提示されているのなら、その周りにもっと大きな円を描き、その問題が何であるのかを表現する。なぜそのようなことをするのかーなぜ問題を大きくするのか? つまり、こういうことだ。問題の解決が難しいのは、それがあまりにも狭く定義され、その範囲内には大した答えがない場合が多いからだ。」

(「最高の答えがひらめく、12の思考ツール」イアン・アトキンソン著)

つまり、「問題は大きくなればなるほど、解決が容易になる」という逆転の発想です。そして、「大きい問題を解決すると、小さな問題は解決する必要がなくなる」というおまけがつきます。

「問題を大きくする発想法」の例

先ほどの例で、考えてみましょう。

「プロジェクトの遅延」について、最初あなたは、「特定の1人の仕事が遅いからだ」という結論に至ったとします。この時の解決策は、例えば、「自分自ら教育係になって、仕事のやり方を教える」とか、「もっと、プレッシャーを与える」などといったものになりがちです。しかし、「特定の1人の仕事の仕方」という非常に小さい問題にフォーカスしているため、劇的な改善は期待できません。
そこで、視点を変えてみましょう。より大きな問題について考えてみるのです。

事象として、「特定の1人の仕事が遅い」ということが実際にあったとしても、その背景には、より根本的な問題が横たわっている可能性があります。それを見抜くコツは、「Whyの質問」です。

「なぜ、彼一人だけが仕事が遅いのだろうか?」
「なぜ、彼一人の仕事のスピードが全体に大きな影響を与えているのだろうか?」
「なぜ、このプロジェクトでは、一人の仕事の遅れが許容できないのだろうか?」
といった具合に、Whyの質問を繰り返すことで、背景を掘り下げていくのです。

そのようにして、問題を分析していくと、「特定の一人の問題」から、「チームのマネジメントの問題」「プロジェクトのリソース配分の問題」「業務システムの問題」など、より大きな問題に本質があることを見抜くことができます。

例えば、この例での本当の問題が「人材の配置が最適でない」ということだとしたら、メンバーの役割を変更し、それに伴うタスクの割り当てをアレンジすることで解決することができます。そして、この解決方法が実現すれば、「特定の一人の仕事が遅い」ということは、そもそも問題ではなくなります。

ifの質問によって、問題を大きくする

問題解決がうまく進まないときは、「この問題をどうやって解決しよう」というHowの質問を一旦横に置き、今一度、Whyの質問を繰り返してみましょう。

「なぜ、この問題が起こったのか?」
「なぜ、この問題は問題なのか、どのような影響があるのか?」
「なぜ、この問題は、ビジネス上の支障を生んでいるのか?」

この質問によって、生まれる答えは、「もしかしたら本当の原因はAではなくBかもしれない」という「仮説」です。この仮説が生まれたら、更に if の質問をしてみましょう。

「もし、Bを解決することができたとしたら、Aにどのような影響を与えるか?」
「もし、Bを解決することができたとしたら、どんな望ましい結果を得られるか?」

という流れで考えてみるのです。このifの質問による答えが、より現実的かつ建設的な影響を作り出すと感じられるとしたら、その時初めて、Bを解決するための手段を考えてみましょう。

問題を大きくする発想法の実践ステップ

それでは、この記事の締めくくりとして、実際に「問題を大きくする発想法」を実践して、効果的な解決策を生み出すための具体的なプロセスを提示します。

1. Why の質問を通して、問題の背景を探る

目の前に問題があることを認識したら、その背景には何があるかをまず探りましょう。具体的には、下記のような形式でWhyの質問を繰り返すのが効果的です。

「なぜ、このことが問題になっているのか?」

「なぜ、この問題が発生したのか?」

「なぜ、この問題を解決できていないのか?」

このようにして、Why を繰り返し、より問題の根本原因へと近づいていきます。

2. ifの質問を通して、発想の範囲を広げる

Whyの質問を通して、問題の背景に対する仮説を立てたら、その仮説をもとに、より発想の範囲を広げるべく、if の質問を実施してみましょう。

「もし、問題の原因がAだとしたら、目の前の事象にどのような影響を与えているだろうか?」
「もし、問題の原因がAだとしたら、これを解決した時、何が得られるだろうか?」
「もし、問題の原因がAだとしたら、これを取り除いた時、他の要素はどう変化するだろうか?」

このようにして、if を繰り返し、問題の原因をより広く、より一般的なレベルで捉えることで、発想の範囲を拡張します。

3. What is the best〜? の質問を通して、取り組む要素を特定する

if で範囲を広げたら、最後に What is the best〜? の質問を実施することによって、最も影響のある要素を特定します。

「何が、この問題を最も進行させているだろうか?」
「何が、この問題を最も複雑にしているだろうか?」
「何が、この問題を最も優れた形で解決に導くだろうか?」

発想を広げた後で、特定の要素を選ぶというプロセスを踏むことにより、これまで思いつかなかった解決策を導くことに繋がります。

ほとんどの問題は、「問題の取り組み方」自体に問題がある

問題に直面した時、多くの人がそれを苦痛に感じ、「何とかして早く取り除きたい」という衝動に駆られることがしばしばあります。そんな時ほど、『「問題の取り組み方」自体が問題かもしれない』ということを思い返してください。

そして、一歩立ち止まって、Why の質問をしてみましょう。もしかしたら、今あなたが考えている問題よりも、より大きな問題が背景にあるかもしれません。そして、往々にして、そのような大きな問題を解決する方がよっぽど簡単で、驚くような成果をもたらします。

ぜひ、この記事を参考にして、新しい解決策を導き出す発想術をマスターしてください。
 
 

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